赤い炎 明鹿野レッドの一日 2025/7/19

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赤い炎、土を練る

―― 明鹿野レッド、陶芸教室にて講師然たりし一日 ――

今日は朝から太陽が肌を焼き尽くそうとしていた。その炎から逃げるように、私は工房へと赴いた。
陶芸教室の講師としての役目があるからである。

もっとも「講師」と言えば聞こえはいいが、実のところ私の技術などは、炎の中で何とか恰好をつけてきたに過ぎぬ。とはいえ、仮にも「明鹿野レッド」などと名乗るからには、赤子の茶碗も、老婆の湯呑も、笑顔で受け止めねばなるまい。

教室には40名ほどの生徒が集まっていた。その中には、素焼きのように真面目な眼差しの少年もいれば、釉薬のように光るネイルをつけた婦人もいた。

「土は、嘘をつきません」と私は言った。

まるで哲学者の言のように聞こえるかもしれぬが、実のところ、言いながら私の内心には別の考えがあった。「人間は、土以上に嘘をつく」と。

だが、教えることは奇妙なもので、自らの不安を忘れさせてくれる。轆轤(ろくろ)を回す手の先で、子供が鳥のような形の器を作った。老婦人はひび割れた皿を作ったが、私はそれを見て「これは時間の器です」と言った。彼女は目を潤ませた。

炎にかければ、土は変わる。人もまた然り。私が赤きスーツを着て、明鹿野レッドなどと名乗る以前、私はただの土くれのような青年だった。けれど、炎に焼かれた――いや、焼かれるしかなかった。そして、今がある。

午後三時、皆の作品を釜に納めながら、私は一瞬、自分の掌を見つめた。土の粉が染み込んでいる。その色はまるで、燃え尽きる前の赤い炎のようでもあった。

「また来月、お会いしましょう」と言う私に、皆が頭を下げた。だがその中に、きっと誰かが、火の気配を感じてくれたと、私は信じている。

かくして、今日も明鹿野レッドは静かに土を練り、また一つ、心に器を作ったのである。